吉川史料館・館長日記
吉川史料館・館長の藤重豊が日頃思うことや歴史などについて書きます。
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播磨国福井荘と吉川氏の関係について

 吉川氏は鎌倉時代から室町時代にかけて、播磨国福井荘の地頭職を持っていた。現在の姫路市南部の勝原・大津・網干の3区域をほぼ包括する地域であったらしい。
 私が当館に勤務し始めて、これまで話題になったことはなかった。先般、広島県立文書館で資料閲覧をしていたとき、偶々に水野恭一郎氏が書いた「播磨国福井荘と吉川氏」という論文があることを知った。それが『武家社会の歴史像』水野恭一郎(国書刊行会 昭和58年2月刊行)に所収されているという。
 古書店でこの書籍を入手し、それを読んで自分の備忘録を作成したので、一部を以下に載せて、みなさんの参考に供する。

 
 吉川氏は維清のころから駿河国有度郡入江保(のち入江荘)に住して入江氏を称し、さらに維清から4代の孫、経義のときから、入江保内の居住地である吉河邑の名をとって氏の名とし、初めて吉川氏を称するに至ったという。
 吉川友兼は、経義の嫡男で、通称を小次郎と言い、頼朝の御家人として、『吾妻鏡』のなかでしばしばその名が出てくる。正治元年(1199)頼朝が死去すると、腹心の武将として権勢を誇っていた梶原景時は、2代将軍頼家とは反りが合わなかった。そこで景時は、翌年正治2年(1200)正月、一族郎党を率いて上洛しようとした。
 頼家からの命を受けた駿河国の武士たちは同国狐ケ崎付近に要撃して、梶原一族を討ちとった。友兼は景時の3男景茂と一騎打ちをし、これを討ちとった。自分も深手を負って、翌日死去した。
 正月25日、将軍頼家はその忠功に報いて、友兼の嫡男経兼に、播磨国福井荘の地頭職を与えた。(『大日本古文書 家わけ第九 吉川家文書』 第1号)この福井荘の地頭職はそれまで梶原景時の保有していた所であった。

 経兼の息男経光は、承久3年(1221)、承久の乱の時、鎌倉方の武士として京都攻めに参加した。そして宇治橋合戦で戦功が著しく、安芸国山県郡大朝本荘の地頭職を付与された。
 その後、鎌倉時代をを経過する間に、播磨国福井荘の地頭職は、吉川経兼→経光→経盛→経家→経盛→経景と相承された。そして、南北朝の争乱の中で次第に勢力を失って、福井荘内の所領の維持が困難になって行ったようである。

 文永4年(1267)に経光から諸子へ所領の配分がおこなわれたのち、吉川氏の嫡宗で、安芸国大朝荘を相伝した経高は、やがて吉川氏本領の地である駿河国吉河邑を離れて、西国の大朝荘に本拠を移すに至った。将来の一族の繁栄を考えた時、所領も広く生産力も高い新恩給与の大朝荘を選んだと思われる。

 南北朝時代の中頃から1世紀余にわたって吉川氏との関係が中絶していた福井荘が、再び吉川氏の手に戻ったのは、応仁2年(1468)のことである。(吉川家文書 第291号・292号) 安芸国大朝荘に居た吉川氏の
惣領経基は、応仁の乱が始まると、細川勝元のもとで戦った。経基は鬼吉川あるいは俎板吉川などの渾名で呼ばれるほどの剛勇の聞こえ高い武将であった。その戦功に対する恩賞であった。細川方には赤松政則がおり、しばらく播磨での赤松氏と山名氏の争いでは、赤松氏の支援にまわっていた。

 応仁の乱がおわると、いよいよ100年も続く弱肉強食の戦国時代に突入する。播磨では浦上氏や別所氏、あるいは備中宇喜多氏、あとを追うように毛利氏、織田信長・豊富秀吉と言った勢力の侵入が始まった。安芸国・周防国・伯耆国でも大内氏と尼子氏の争い、それに毛利氏の台頭というように、安芸国の吉川惣領家もそれに巻き込まれながら、遂に毛利元就の息子元春を養子に迎えて、生き残りを図らなければならなかった。

 このような情勢の下で、本領から遠く離れた所領の保持は困難であった。福井荘に対する吉川氏の領主権は、激動する渦の中で、いつしか消滅していった。

 天正8年(1580) 播磨国に入った羽柴秀吉は、黒田孝高に対し、福井荘内より6200石を宛行っている。すでに荘園としての実態は消滅していた。

 水野恭一郎氏の論文は、『大日本古文書 家わけ第9「吉川家文書」』を使ったものである。これから福井荘を論ずるとすれば、水野論文以後に新しい史料の発掘ができないか、その上で新しい視角で荘園の構造に切り込むことが必要かと思う。
 
 
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